ああとにあつく!子殺し親殺しのこころ(4)(文学シリーズ、ツィター風ブログ)

ああとにあつく!子殺し親殺しのこころ(4)(文学シリーズ、ツィター風ブログ)

 私、お母さんが大好きだった。いつも私を抱きしめて頬ずりをしてくれた。その、得(え)も言われぬ温もりと芳香を覚えたのは何歳の頃だったでしょうか。判っきりしませんが、幼稚園の年長組の頃でもお母さんは大好きでした。

 お母さんと私はラブラブの関係でした。小学生の頃まではラブラブの関係でしたので、私はお母さんの言うことには何でも従っていたのです。ところが中学進学で、お母さんとトラブッテしまったのです。

 つまり、母は、私を自由に支配し、思いのままに扱い、私は、母自身の欲望を満たす人形のような存在であることを理解したのです。私の母への愛は徐々に憎しみに変わっていくのでした。いつか爆発しないかと不安の気持ちで一杯でした。

 幼い頃からの掛(か)け替(が)えの無い友達と映画に行くと断わった時、大事なときよ勉強しなさい、と何の感情もない言葉でピシャリと言い渡された時、私の気持ちは憤怒の感情となり吹き上がったのです。

 私は、思わず、母の握っていた出刃包丁を奪い取り、立っている母の背中に思い切り突き立てました。振り向いた母の顔の二つの穴のような目を見ると、私はぞっとして、調理台に押し付けるようにしながら、母の胸にも2、3度、出刃包丁を突き立ててしまたのです。

 憤怒の感情が収まった後、私は思わず、出刃包丁を取り落としてしまいました。出刃包丁はカタンと両手から離れて乾いた音を立てたのです。

 そして、そうだ、人間が人間を殺してしまえば、男でも女でも、この世の奈落(ならく)の底、地獄の淵まで落ちていくのだと悟ったのでした。

 (終わります、ご機嫌よう、さようなら)

 

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