ぷかぷか(2)(文学シリーズ短編その4) 

   ぷかぷか(2)(文学シリーズ短編その4) 
    序章 あの娘(むすめ)のこと(2)

 「いつもパンティーは穿かないの」背広を小さなソファーセットの椅子に投げ捨てながら聞いた。娘はそれをを取り上げ、クローゼットの中に掛けた。クローゼットの扉の裏の鏡で髪の乱れを直しながら、

  「あらいやだ、見えたのね」と言った。初めてまじまじと娘の顔を見た。美形であった。ただ、鼻は魚のひれのようで悲しげであった。
  「ジャ、いいね」と言いながら、短いスカートを脱ぎ捨てた。

 私もクローゼットの前まで歩き、財布から3万円を取り出して彼女に渡した。
 「ありがとう、助かったわ」と言いながら、娘はマホガニーのぺベルレザーのバッグのなかに、これも放り込み、銀のジッポのライターとハードケースの煙草、さらにホテルの前でショルダーに放り込んだ吸殻のテイッシュをつまみ出し、ソファーセットの灰皿に捨てた。

 丸出しになった娘のお尻をまぶしく眺めながら、カッターとネクタイを外しクローゼットに、わたしも、これを、投げ捨てた。

 「私、おしっこ姉ちゃんなの」「洗わせてね」と言った。私の方に向き直り、クローゼットの前のショルダーバックから白いパンテイーを取り出すと浴室の空き硝子のドアーを開けた。浴場の中から声が聞こえた。

 「飲みすぎると、ところ構わずやってしまうの」そうか、と思った。そう言えば「新地」の外れの小さな路地の奥で、薄暗がりの中で、スカートの中から白い尿が勢い良く迸る光景は、二、三度見たことがあった。

 私はソファーセットの椅子に座ると娘の煙草を吸った。ジッポで煙草に火をつけるときのこの安らぎと至福の喜びから遠ざかって何年になるだろうか、と思った。

 「サア出来たわよ」と娘が浴室から呼んだ。靴下を脱ぐときはいつも思う。面倒くさい、と。娘からシャワーを手渡され、その水勢が私のものに触れ、たまらない心地良さを感じ、何だこれは、と思いながら、思いついて、娘のものに水勢を浴びせた。

 「良く洗ってあげよう」と言って、石鹸で泡立て、水勢を浴びせていると、大きなため息をついた後、娘はシャワーを私から取り上げ、怒ったようにシャワーを止めた。

 二人は風呂から上がると、ソファーセットで、それぞれバスタオルをまとい、チーズを食べながらビールを飲んだ、言葉少はなかったが、見つめあいながら、満ち足りた気分であった。

 身の上話には興味はなかったが、娘は、ポツリと云った。唄を唄っているのだと。そして、私は、音楽関係に知り合いもないのに、名刺を渡したのだ。

 「どうしょうもないときは尋ねて来てもいいよ」と語っていたのだ。だが、彼女が、どうもしようのないときは、私にもどうしようもなく、何も出来はしないのだが、と思ってはいた。

 既存の物事に飽き足りないときには、あるいは、懐疑的になれば、時には、退廃的にもなってもいいだろう、そんな気持ちであった。そして、二人はベットの中でデカダンスの限りを尽くし、また、快楽を貪った。二人は、そのほとぼりが冷めた後、100インチのテレビで音楽を楽しみ、再び、言葉少なく、チーズでビールを酌み交わした。

 私が、暫く、まどろみ目覚めると、私の顔の前に、悲しげな彼女の顔があり、その頬には涙の流れた跡があるような気もした。私は、やさしく、静かに、再び、彼女と交合った。

 私が眠りから覚めると、既に、娘は部屋を去っており、ソファーセットの小さなテーブルの上に小さな名刺が置いてあった。

 (つづく)

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