老女パワーの昼カラ風景その2(文学シリーズ、ショート)

老女パワーの昼カラ風景その2(文学シリーズ、ショート)

 店の外からタクシーのドアがしまる音が何回も景気よく響き、歌手Kは陰気な若い兄ちゃんをつれて、追っかけの女性と共にKに到着した。店に入るとお付の兄ちゃんはカウンター席の端に座り込みショーが終わるまで振り返りもしなかった。

 ママが緊張しながら挨拶の言葉を述べて歌手Kのショーは開始されたのである。人間性も良いのであろう男前のさわやかな人相でさすがにプロは歌も違うのである。我が仲間は土台(どだい)比較することも不遜なのにしり込みしてしまったに違いない。

酒が飲み放題であるので女性陣もアルコールで盛り上がってきた。歌手Kの追っかけ組みの8人は遠出の影響があって元気である。だが、店の常連の女性は、17人も居て数では圧倒的に多いのだが、越路吹雪似のリーダー挌の長身の美女が袖口で引っ掛けて吸い物をこぼしてしまったので意気消沈した。男性陣は中立で誰彼問わず女性に軽口ばかり飛ばしていた。

 私の仲間の二人は相変わらず額をつき合わせひそひそ話しながらいやに怖じ気ついて上手い上手いと囃し立て老女を前に歌うことにさえ怖じ気ついているのだ。老女パワーもあなどれないのである。

 ママの発案で歌手Kへのキッス合戦が始まった。当たり前だが京都組みは濃厚である。店付の老女達は遠慮がちで越路吹雪似の美女だけが頑張った。

 歌手Kの様子を見ていて、ひょっとするとママは後援会に入っているかもしれないと考えた。柔和な彼の笑顔と人相を見ていると進められたら私も入ってよいと考えた。

 宴が小康(しょうこう)を得た頃、タクシーがの止まる音がして運転手が顔を出し、未だそろっていませんがと声をかけた。歌手Kと追っかけ組みが引き上げるのである。

 私も二人の友人を残し、先に帰ることにした。引き上げるとき、明瞭に発音できるよう「今年が良い年であるように」と口の中で練習をした。

 (老女パワーその2、終わります。さようなら。御機嫌よう)
 


 

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