あゝとに熱く!S氏の日常(4)(文学シリーズ(31))

 S氏の日常(4)(文学シリーズ(31))

<テーマ~人間は何故生きるのか>  

第1 起章~相変わらずぐうたらなS氏である。
 
 S氏は正月も済んだが、神棚に飾ったしめ縄を未だ放ったままなのである。普通は玄関先に飾るものだが、そして、一般的には12月26日から28日までで、29日と31日に飾るのは意味としては悪いのある。

 12月31日に注連縄を飾ることは「一夜飾り」と言われ、神様に失礼なことであると言われているのである。だが、地域によって色々あるから、そう拘ることもないのである。それで彼は、手っ取り早く神棚に、直接に、簡易なおもちゃのようなしめ縄を2本の釘を打ち付けて、その輪っかを引っ掛けることにしているのである。

 S氏の氏神様は、もう、天の原か、どっかの天界にお帰りになったのに、正月が過ぎても永らく放っておいて、2月に入ってヤット神棚の片隅にその他の縁起物や古いお札と共に積み上げたのである。いずれ、近い神社に納めようと考えているのである。

第2 承章~ふと、生きることはなんだろうと思った。
 
 例年であれば、1月15日のどんど焼きの日に近くの神社に納めていたのだが、今年は、ずっと放っているのである。その事を気にしながら、神棚の前を通る時、「早く納めに行こう」、「行こう」、との思いだけは持っていたのである。

 そんな思いもあってか、S氏は、三日前に、神棚の前を通った時、「私はなんのために生ているのだろう」、と思い至ったのである。

第3 転章~ピタゴラス、岡潔先生と寺田虎彦先生の発見の鋭い喜び、などのことを思い出す。

 彼は思った。確か、ピタゴラスは風呂に入っていて、ピタゴラスの定理を発見した時、丸裸で街中を走り回ったそうだ。それほど定理の発見の喜びに歓喜した、と何かの本で読んだ記憶を思い出した。

 それに、と思った。彼が、唯一、先生と尊敬する奈良女子大の教授で、お亡くなりになったが、世界的数学者の岡潔先生のどれかの本で、これも、確かだが、世界で始めて雪の結晶を人工的に作り出した寺田虎彦先生が、もの事を発見したときは、「発見の鋭い喜びがある」と書いていると紹介ししていることも、思い出したのだ。

 ところで、彼は岡潔先生の書かれた本は全て初版本を揃えていたのに、ある先輩が、ろくに本など読まないのに、「貸してくれ」、と云うので、一冊を貸したがそのまま無くなってしまい。さらに、彼の細君も本などには一切興味がなく、彼に秘かに、狭い長屋であるから止むを得ないのだが、ゴミとして一からげにして出したので、多分、蔵書の多くは市のゴミの焼却場の灰としてなくなってしまったのだ。

 彼は、このような人間存在の哲学的な疑問に突き当たった時は、このことを、思い出して残念に思うのである。だが、根がぐうたらなS氏は、先生の本が、今、何冊残っているのか調べもしないのである。このような、思考もかすかに、彼の脳裏を横切ったが、最後に思い出したことは、マズローの人間の欲求の段階説である。

 これも、確かだが、と彼は思った。ドクターマズローは、人間には食欲があって、性欲があって、仲間を作る安心感があって、この後に何かがあったかもしれないが、最後には物を作り出す喜びがあるのであって、この何かを作り出すことが、人間の最高の喜びだ、と何かの 本に書いていたことも思い出したのである。

 なるほど、と彼はこの欲求の段階説を固く信じていたので、現役時代に、何かを話す時はこのことを良く話していたことも思い出したのである。

第4 結章~S氏は大いに反省し、自殺が多いのは教育が悪い、と結論付けたのだ。

 S氏は、そのような思念の結果、思ったのだが、「今、自分は、ものを作り出すことに繋がるかどうか、疑問だが、「ブログ」とやらをやっていて、自己実現というか、いくらかの読者も居て、それが、自己の存在の確認みたいなこと、につながり、何とか生きているのであろう」、と考えたのであった。

 また、本当かどうか解からないのだが、若者の自殺も多いそうだが、これは、学校の先生が人間の存在の本当の喜びを教えないから、死んでしまうのだ、と結論付けたのである。色々の発表会や絵画や作文などでは、その子のことを最大限、生徒と一緒に褒めてやるなど、発見やものを作り出す喜びに繋がる動機付けが必要なのだ、と最後に彼は考えたのである。

 さて、さて、兎も角、最初に戻るが、ぐうたらな毎日の生活を送るS氏は、いつになったら、しめ縄を納めに行くのであろうか。

 (おわり)

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