ああとにあつく!ぷかぷか(11)(文学シリーズ短編その4) 終章(4)

 ぷかぷか(11)(文学シリーズ短編その4) 終章(4)

 叔母ちゃんが云った。謙虚で控えめな要望であった。私は、なんの異存もなかった。なにしろ私の知る限り、叔母ちゃんのこのよううな申し出は初めてのことであったからだ。

 「もし、墓参りに行くのであれば、私も行きたいわ」

そうかと思った。中小企業のわが社も臨時休業を1日とって、皆んなで埼玉までお墓参りに行こうと思った。あの優しそうな象さんの大きな唄歌いのために墓参り行こうと思ったのだ。

 そして、渋珍(しぶちん)なお局に指示しておこう、精一杯の真紅の薔薇を飾るのだ。そして、真紅だぞ、と念押しもしなければと、その時、思った筈だ。

 そして、なんの関連もなく、叔母ちゃんに想いが至って、そうか、叔母ちゃんも未だ独身なのだ、男が居るのであろうか、後でお局に聞いてみよう、と考えたのだった。

 事務所のブランデーを飲むことには寛大ではあったが、知らず知らずのうちに、叔母ちゃんに冷たいことは無かったのだろうかと、ふと、考えた。おばちゃんからは、お局同様に、奴(やつ)、奴(やつ)と呼び捨てにされるのだがこの会社のボスとしては、結婚相手をそれとなくさがしてやるとかの配意を、するべきでなかったのかと、反省したのだ。

 彼女は「依存」などに落ち込むことのない、立派な家庭で育った女性であるのだ。仕事について、何の不安もなく任せることが出来たではないか。もし、叔母ちゃんが結婚すれば、なにもかもわきまえた理想の妻であるし、母親であるに違いない、と始めて気がついたのであった。このような素晴らしい女性が身近に居たのだと、始めて気が付いたのだった。

 この事は、反省もしたし、愕きでもあったのだ。この理由は、後から、是非、考えなければならない、と決心したのだった。

 それに、確か、叔母ちゃんも、「ぷかぷか」と言う歌を聞いて、涙を流したのだった。

 「なんなんでしょうね、辛いこと、嫌なことがあっても、この唄聞いていると、マッいいか、と思ってしまう、そんな唄なんだ、そして、やっぱり泣いてしまう、そんなに激しい人生送ってきたわけじゃないんだけど」。

 「こんなに心に染みる歌ってないよね、皆それがわかっているんですね、優しさには沢山種類があるんですね」

 これは、叔母ちゃんが「ぷかぷか」について語った言葉なのだ。

 ふと、私は、その時、我に返ったのだ。あの唄歌いの、優しい大きな象さんが自殺したと言うのだ。しかも、首を吊っているのを長男が発見したとのことだった。何故だ、と思いながら、瞬時に、二人で、ホテルのベットカバーの下にもぐりこんだ、その時の、唄歌いの男の体温を、暖かかった、その温もりを思い出していたのだった。

 <ご参考 (大分期間が開いたので)>
  ぷかぷか(10)(文学シリーズ短編その4) 終章(3)  
    http://39383054.at.webry.info/201010/article_24.html 
 
(つづく)

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